相続対策は何から始める?基本の手順と方法をわかりやすく解説

公開日:2026年07月28日
最終更新日:2026年07月28日

将来の相続に備える相続対策は、残される家族への負担を減らすために不可欠な準備です。
しかし、具体的に何から手をつければ良いのか、どのような方法があるのか分からず、不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、相続対策の基本となる3つの目的から、失敗しないための正しい手順、そして今日から実践できる具体的な方法までをわかりやすく解説します。

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目次

相続対策とは?すべての人に知ってほしい3つの目的

相続対策とは、単に税金を安くすることだけを指すのではありません。
残された家族が円満に財産を引き継ぎ、納税に困らないようにするための事前準備全般を意味します。
財産の多少にかかわらず、すべての人にとってその必要性があり、大きく分けて3つの重要な目的が存在します。

この3つの目的を理解し、バランス良く対策を講じることが重要です。

目的1:相続税の負担を軽くする「節税対策」

相続対策の中で最もイメージされやすいのが、相続税の負担を軽減する節税対策です。
相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超える場合に課税されます。
生前に財産を贈与したり、不動産や生命保険などを活用して財産の評価額を下げたりすることで、将来支払う税金を抑えることが可能です。

計画的な相続税対策は、より多くの財産を家族にのこすことにつながります。

目的2:親族間のトラブルを防ぐ「遺産分割対策」

遺産をめぐる親族間の争いは「争族」とも呼ばれ、一度こじれると深刻な問題に発展しかねません。
このようなトラブルを防ぐために行うのが遺産分割対策です。

誰にどの財産をのこすのか、生前のうちに意思を明確にしておくことが最も重要であり、そのために有効な手段が遺言書の作成です。
遺言を作成する際は、特定の相続人に認められた最低限の取り分である遺留分にも配慮する必要があります。

目的3:相続税をスムーズに支払うための「納税資金対策」

相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、現金で一括納付しなければなりません。
遺産の多くが不動産などで、すぐに現金化できない場合、納税資金が不足する事態に陥ることがあります。
納税資金対策とは、この支払いに備えておくことです。

具体的には、生命保険に加入して死亡保険金を納税資金に充てたり、計画的に預金を準備したりして、スムーズに税金を納められるようにします。

【ステップ別】失敗しない相続対策の始め方と正しい進め方

相続対策を効果的に進めるには、思いつくまま手をつけるのではなく、正しい手順を踏むことが不可欠です。
まず現状を正確に把握し、家族で方針を共有したうえで、具体的な対策を実行するというステップが基本となります。
この手順を守ることで、無駄がなく、家族全員が納得できる対策を進めることが可能になります。

ステップ1:現状を把握する|財産目録を作成し遺産総額を明確に

相続対策の第一歩は、現在どのような財産がどれだけあるのかを正確に把握することです。
不動産や金融資産といったプラスの遺産だけでなく、借入金などのマイナスの財産もすべて洗い出し、財産目録として一覧にまとめます。

これにより遺産の全体像が明確になり、相続税がかかるかどうか、どのような対策が必要かの判断基準となります。

ステップ2:方針を決める|3つの対策の優先順位を整理する

財産の全体像が把握できたら、次に行うのは方針決定です。
前述した「節税」「遺産分割」「納税資金」という3つの対策のうち、自分の家族にとってどれを最も重視するのか、優先順位をつけます。
例えば、相続人同士の関係性からトラブルが予測される場合は遺産分割対策を、税負担が重くなりそうな場合は節税対策を優先するなど、家族構成や財産状況に応じて方針を固めます。

一般的に、これら3つの対策の中では、家族間のトラブルを避ける遺産分割対策が最も優先度が高いとされています。

ステップ3:対策を実行する|目的に合った具体的な方法を組み合わせる

方針と優先順位が決まったら、いよいよ具体的な対策を実行に移します。
決定した方針に沿って、生前贈与や生命保険の活用、遺言書の作成といった方法を個別の状況に合わせて選択し、組み合わせていきます。
一つの方法に偏るのではなく、複数の対策を組み合わせることで、より効果的な相続対策が実現します。

具体的な対策の選択肢については、次章で詳しく解説します。

【目的別】今日からできる具体的な相続対策12選

相続対策には様々な方法があり、目的や財産状況に応じて最適なものを選択する必要があります。
ここでは、今日からでも検討できる具体的な対策を一覧でご紹介します。
それぞれの方法の特徴を理解し、自分の家族にとって何ができることなのか、具体例を参考にしながら最適な組み合わせを見つけることが重要です。

生前贈与で相続財産そのものを減らす方法

生前贈与は、被相続人が生きているうちに財産を配偶者や子などに分け与えることで、将来の相続財産そのものを減らす、最も直接的な節税対策です。
贈与税には様々な非課税枠や特例が設けられており、これらを計画的に活用することで、税負担を抑えながら生前に財産を移転させることが可能です。

暦年贈与|年間110万円の非課税枠を計画的に活用する

暦年贈与とは、1人の人が1年間(1月1日~12月31日)に受け取った贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからない制度です。
この110万円の非課税枠を毎年活用し、長期間にわたって贈与を続けることで、大きな節税効果が期待できます。
なお、税制改正により、相続開始前7年以内(改正前は3年以内)の贈与は相続財産に加算されるため、早めに始めることが重要です。

相続時精算課税制度|まとまった財産を一度に贈与する

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。
累計2,500万円までの贈与が非課税となり、超えた分には一律20%の贈与税がかかりますが、この制度で贈与した財産は相続時に相続財産に加算して相続税を計算します。
2024年からは年間110万円の基礎控除が新設され、より活用しやすくなりました。

住宅取得等資金の贈与|子や孫のマイホーム購入を支援する

父母や祖父母から、子や孫がマイホームを新築、取得、または増改築するための資金として贈与を受けた場合に、一定額まで贈与税が非課税となる特例です。
非課税限度額は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円となっており(2026年12月31日まで)、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用することも可能です。

教育資金の一括贈与|教育費用のための非課税制度

30歳未満の子や孫のために、祖父母などが教育資金を金融機関の専用口座に一括で拠出した場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。
この教育資金贈与の特例は、必要な都度渡すのではなく、将来の教育費をまとめて非課税で渡せる点が特徴です。
ただし、この制度は2026年3月31日までの期間限定措置となっています。

結婚・子育て資金の一括贈与|結婚や育児をサポートする

18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚や出産、育児にかかる費用を支援するために資金を一括贈与した場合、最大1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。
こちらも金融機関との契約が必要で、使い道が結婚や子育て関連に限定されます。
この非課税措置は2027年3月31日までとなっています。

財産の評価額を下げて節税効果を高める方法

相続財産そのものを減らす生前贈与とは別に、財産の評価額を引き下げることでも節税が可能です。
相続税は財産の「評価額」に対して課税されるため、現金や預金のまま保有するよりも、評価額が時価より低くなる不動産や生命保険、お墓などの資産に換えることで、税負担を軽減する効果が期待できます。

現金を不動産に換えて評価額を圧縮する

現金や預金は額面通りの100%で評価されますが、不動産(土地、家、建物)の相続税評価額は時価よりも低く設定されています。
特に、土地は路線価(時価の8割程度)、建物は固定資産税評価額(時価の7割程度)で評価されるため、現金で持つより評価額を圧縮できます。
アパートや賃貸マンションなどの賃貸不動産はさらに評価額が下がるため、投資用マンション、特にタワーマンションを活用した節税も行われます。

生命保険の非課税枠「500万円×法定相続人の数」を活用する

被相続人が契約者かつ被保険者であった生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象ですが、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。
例えば法定相続人が3人いれば1,500万円までが非課税となります。

現金で遺すよりも終身保険などに加入することで、非課税枠の分だけ課税対象の財産を減らすことができ、納税資金対策としても有効です。

生前にお墓や仏壇を購入して非課税財産に換える

お墓や仏壇、仏具、墓地などの祭祀財産は、先祖を祀るためのものとして国民感情に配慮し、相続税がかからない非課税財産とされています。
そのため、生前に現金でお墓などを購入しておくことで、その分の現金を課税対象から外すことが可能です。
ただし、社会通念上不相当に高額なものは認められない場合があるため注意が必要です。

特例や制度を活用して税金の負担を軽減する方法

相続税法には、特定の条件を満たす場合に税金の負担を大幅に軽減できる特例や制度が数多く用意されています。代表的なものに、配偶者の税額を軽減する配偶者の税額軽減や、自宅の土地の評価額を大幅に下げられる小規模宅地等の特例があります。

配偶者の税額軽減|配偶者が相続する遺産を大幅に控除

配偶者の税額軽減とは、亡くなった方の配偶者が遺産を相続する場合に利用できる制度で、通称配偶者控除とも呼ばれます。
この制度により、配偶者が取得した遺産額が1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。

多くのケースで配偶者の税負担をゼロにできる強力な制度です。

小規模宅地等の特例|自宅や事業用地の評価額を最大80%減額

小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた自宅の土地や、事業を営んでいた土地などを相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。
相続財産に占める自宅の土地の割合が大きい場合、この特例を適用できるかどうかで納税額が大きく変わるため、非常に重要な節税対策となります。
ただし、適用には同居の有無など細かい要件を満たす必要があります。

養子縁組|法定相続人を増やして基礎控除額を上げる

養子縁組を行うと、その養子は法律上の子(法定相続人)となります。
法定相続人が1人増えることで、相続税の基礎控除額が600万円、生命保険金の非課税枠が500万円増加するため、節税効果が期待できます。
特に、相続人ではない孫を養子にする「孫養子」は、世代を一つ飛ばして財産を承継できるメリットもあります。

ただし、税法上、法定相続人の数に含められる養子の数には制限があります。

相続対策を始める前に押さえておきたい注意点

相続対策は計画的に行えば大きな効果が期待できますが、一方で注意すべき点も存在します。
税制は常に変化しており、やり方を間違えると予期せぬ問題が発生する可能性もあります。
対策を実行する前には、これから挙げるポイントを必ず押さえておきましょう。

税制改正によって対策の効果が変わる可能性がある

相続税や贈与税に関する税制は、毎年のように見直しが行われます。
例えば、2024年からは生前贈与加算の期間が相続開始前3年から7年に延長されるなど、大きな改正がありました。
過去に有効だった対策が、最新の税制では効果が薄れたり、逆に不利になったりする可能性もあります。

常に最新の情報を確認し、専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。

やり方を間違えると追加で税金がかかるリスクがある

相続対策は専門的な知識を要するため、自己判断で進めるとかえって税負担が増えるリスクがあります。
例えば、親名義の口座に子供が資金を積み立てる「名義預金」は、相続時に親の財産とみなされ、相続税の対象となります。
また、贈与の事実を証明する契約書がないと税務署に否認される可能性もあります。

良かれと思って行った対策が原因で、後から追加で税金を支払うことにならないよう注意が必要です。

二次相続まで見据えた長期的な視点で計画を立てる

相続は一度で終わるとは限りません。
例えば、父が亡くなった時を一次相続、その後、母(残された配偶者・妻)が亡くなった時を二次相続と呼びます。
一次相続の際に配偶者の税額軽減を最大限活用して、妻がすべての財産を相続すると、その時点での相続税はゼロになるかもしれません。

しかし、その結果、二次相続の際に子供たちの税負担が非常に重くなるケースがあります。
一次と二次のトータルで最も税負担が軽くなるよう、長期的な視点で計画を立てることが求められます。

相続対策の相談は誰にするべき?専門家の選び方

相続対策は法律や税務の知識が複雑に絡み合うため、専門家のサポートが不可欠です。
しかし、誰に相談すれば良いか分からないという方も多いでしょう。
相続の相談は、相談したい内容に応じて適切な専門家を選ぶことが重要です。

ここでは、主な相談先とその役割を解説します。

税理士|相続税の申告や節税対策のプロフェッショナル

相続税の計算や申告、具体的な節税対策の立案については、税金の専門家である税理士が適任です。
特に、相続案件の経験が豊富な税理士は、特例の適用判断や税務調査への対応など、専門的な知見を持っています。
生前贈与の計画や財産評価など、相続税に関するあらゆる相談に対応してくれます。

弁護士|遺産分割トラブルや法的な問題解決の専門家

相続人間でのトラブルがすでに発生している場合や、将来的に揉める可能性が高い場合には、法律の専門家である弁護士への相談が最適です。
弁護士は、遺産分割協議の代理人として交渉を行ったり、遺言書の作成を法的な観点からサポートしたりします。
遺留分に関する問題など、法的な争いに発展しそうな場合は、早めに相談することで問題を未然に防ぐことにもつながります。

司法書士|不動産の名義変更(相続登記)の専門家

遺産の中に不動産が含まれている場合、相続後に法務局で所有者の名義変更(相続登記)手続きが必要です。
この相続登記の専門家が司法書士です。
2024年4月からは相続登記が義務化され、手続きの重要性が増しています。

遺言書の作成支援や成年後見制度に関する相談も司法書士の業務範囲です。

相続対策に関するよくあるご質問

ここでは、相続対策はいつから、どのように始めればよいか、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

相続対策はまず何から始めるのがベストですか?

相続対策は、まず「財産の現状把握」から始めるのがベストです。
所有する全ての財産と負債をリストアップし「財産目録」を作成します。

この準備により、相続税がかかるか、どのような対策が必要かの判断基準ができます。
現状把握という最初の手順を踏むことが、効果的な対策への第一歩となります。

遺産総額がいくらあれば相続税の対策が必要になりますか?

遺産総額が基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合に相続税対策が必要です。
例えば相続人が配偶者と子1人の計2人なら、基礎控除額は4,200万円となります。
遺産がこの額を超えるなら対策を検討しましょう。

特に、遺産が1億円、2億円、5億円と高額になるほど対策は必須です。

親族でもめないための相続対策で最も効果的な方法は何ですか?

最も効果的な方法は、法的に有効な遺言書を作成することです。
誰にどの財産をのこすかを明確に記した遺言は、相続人間の争いを防ぐ強い力を持ちます。
遺言書を作成する際は、特定の相続人に保障された最低限の取り分である遺留分にも配慮した内容にすることが、円満な相続を実現する鍵となります。

まとめ

相続対策は、「節税」「遺産分割」「納税資金」という3つの目的を達成するために行います。
まずは財産目録を作成して現状を把握し、家族で対策の優先順位を決めた上で、生前贈与や生命保険の活用、遺言書の作成といった具体的な方法を実行するという手順が重要です。
税制改正や二次相続といった注意点も踏まえ、自分だけで判断せず、税理士などの専門家に相談しながら、早めに準備を進めることが求められます。

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この記事の監修者:北嶋 憲

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株式会社新日本コンサルティング アセットマネジメント事業部部⾧

1974 年1月生まれ
自身も複数棟のアパート経営を行うサラリーマン大家