
「利回りが高い物件を購入したのに、なぜか手元にお金が残らない…」そんな悩みを抱えるマンションオーナーもいるのではないでしょうか。その原因の多くは、キャッシュフローの見落としにあります。毎月の収支が黒字であっても、突発的な修繕費や空室リスクに対応できる余裕がなければ、経営は安定しません。
この記事では、キャッシュフローの基本や計算方法、安定させる方法を解説します。安定した収益を得るためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
マンション経営のキャッシュフローとは?

まずはキャッシュフローがどのようなものなのか、なぜマンション経営で大切なのかを解説します。
キャッシュフローの定義
キャッシュフローとは「現金の流れ」のことを意味します。マンション経営では家賃収入や更新料などの収入から、管理費や税金、ローン返済額などの支出を差し引いた後、手元に残る現金のことを指します。
キャッシュフローは、単なる帳簿上の利益とは異なり、実際に使用可能な資金の流れを表しています。そのため、減価償却費のように実際には支出を伴わない費用は、キャッシュフローの計算には含みません。
マンション経営におけるキャッシュフローの重要性
マンション経営でキャッシュフローがプラスの状態は、手元に現金が残っていることを意味します。これは、経営が健全に行われている状態であることを示しています。
キャッシュフローに十分な余裕があれば、突発的な修繕費の発生や、一時的な空室による収入減少などの不測の事態にも対応できます。具体的には台風による屋根の破損など、予期せぬ修繕が必要になったときも十分なキャッシュフローがあれば、迅速に対応できるというわけです。
一方で、キャッシュフローがマイナスの状態が長く続くと、ローンの返済や必要な修繕を行うための資金が不足するリスクが高い状態であると言えます。
ただし、修繕費などの大きな支出によって一時的にキャッシュフローがマイナスになることは珍しくありません。重要なのは、長期的な視点でキャッシュフローを管理し、全体としてプラスを維持することです。
マンション経営のキャッシュフローに関わる収入と支出の具体例

キャッシュフローを正確に把握するには、収入と支出の内訳を理解することが重要です。ここからは、キャッシュフローに影響する収入・支出を見ていきましょう。
マンション経営のキャッシュフローに関わる主な収入の項目
まずはキャッシュフローに影響する収入から解説します。
家賃
家賃は、マンション経営の主たる収入源です。入居者から毎月得られる家賃は、マンション経営の中心的な収入になります。
礼金や更新料
礼金は入居時に、更新料は契約更新時に入居者から得る収入です。近頃は礼金や更新料をなしにして差別化を図り、入居者を集めようとしている物件も多く見られます。
入居者から集める共益費や管理費
共益費や管理費は、建物の共用部分の維持管理に使用するために入居者から回収する費用です。これらは実質的にはオーナーの収入とはならず、建物の維持管理に充てられますが、キャッシュフロー上の収入には含まれます。
駐車場や駐輪場代
付帯設備である駐車場や駐輪場の利用料も、重要な収入源となります。特にファミリー向けマンションを中心に駐車場の需要が高く、家賃とは別に安定した収入を得られる可能性があります。
マンション経営のキャッシュフローに関する主な支出の項目
続いて、キャッシュフローに影響する主な支出について解説します。
ローンの返済額
マンションは高額なため、ほとんどの場合ローンを組んで物件を購入します。マンション経営の支出はこのローンの返済が大半です。ローンの返済額には、元金と利息の両方が含まれています。ローンは毎月一定の額を返済する計画を立てますが、この、返済額が多いとキャッシュフローを圧迫することになります。
物件に使う管理費
管理費は、建物の共用部分の清掃や設備の保守点検、管理会社への委託費用などに充てられる支出です。物件の規模や管理の内容によってかかる費用は異なります。
物件の管理を全てオーナーが自分で行う「自主管理」は時間も手間もかかるため、管理費は必要経費と考えたほうが賢明でしょう。
修繕費
修繕費は、建物や設備の劣化に対応するための支出です。外壁の塗り替えや屋上防水工事などの修繕は、十数年に一度必要となり、物件の規模にもよりますが1,000万円を超えることもあります。修繕費は、計画的に積み立てておくことが一般的です。
保険料
火災保険や地震保険などの各種保険料も、定期的な支出項目の一つです。建物の構造や規模、付保する補償内容によって保険料が変わりますが、一般的に年間数万円から数十万円程度の費用がかかります。
税金
建物や土地には固定資産税と都市計画税がかかります。これらの税金は物件の評価額に基づいて算出され、物件の所在地や規模などによって額が異なります。
また、マンション経営による所得に対しては所得税や住民税が課されます。
マンション経営のキャッシュフローに影響する要因
キャッシュフローを適切に管理するには、影響を与える要因を理解することが不可欠です。ここからは、どのような要因がキャッシュフローに影響するかを解説します。
空室率
マンションの空室率が高くなれば家賃収入が減少し、キャッシュフローが悪化します。例えば、80戸のマンションで8戸が1年間空室のままだった場合、年間の家賃収入が満室時と比べて単純計算で10%減少することになります。
空室を減らすために家賃を下げる方法も考えられますが、低すぎる家賃の設定は長期的な収益性の低下につながります。
空室の発生は、入居者の満足度とも関わっています。質の高い管理を行えていれば入居者の満足度が高まり、空室が発生しにくくなります。共用部を常に清潔に保つ、入居者のトラブルに迅速に対応する、設備の不具合を早期に発見し修理するなどの取り組みが満足度の維持に効果的です。
ローンの返済条件
ローンは金利や返済期間によって月々の返済額が変動するため、キャッシュフローにも影響します。例えば、6,000万円のローンを組む場合、返済期間が同じとすると金利が1%と2%では月々の返済額に約3万円の差が生じます。
返済期間も重要な要素です。返済期間を長く設定すれば月々の返済額は少なくなりますが、総支払額は増加します。逆に、返済期間を短く設定すれば総支払額は減少しますが、月々の返済額が高くなります。
修繕費の発生
マンションは経年劣化するため、定期的な修繕を行う必要があります。この修繕はオーナーが行うため、修繕の発生はキャッシュフローに影響します。ちなみに修繕費は築年数の経過に伴って上昇する傾向にあります。
マンション経営では大規模な修繕に備えて、計画的に資金を積み立てておくことが一般的です。修繕費を積み立てておかないと、いざ大規模修繕を行うときにキャッシュフローが悪化しかねません。
キャッシュフローの計算方法と具体例
ここからは、数字を用いて具体的なキャッシュフローの計算を見ていきましょう。
マンション経営におけるキャッシュフローの計算は、基本的に「収入から支出を引く」方法で求められます。マンション経営で得られる全ての収入から、かかる全ての支出を引くことでキャッシュフローを算出します。
具体的な数字を用いて計算をしてみましょう。
【年間家賃収入】
720万円(月額60万円)
【支出の内訳】
管理費:60万円(月額5万円)
修繕費:36万円(月額3万円を積み立てたとする)
ローン返済:360万円(月額30万円)
保険料:12万円
税金:72万円(固定資産税など)
この場合のキャッシュフローは以下のように計算されます。
年間家賃収入720万円-(管理費60万円+修繕費36万円+ローン返済360万円+保険料12万円+税金72万円) =720万円-540万円 =180万円 |
この計算例では、年間180万円のプラスのキャッシュフローが生まれていることになります。
【注意】
ここで重要なのは、帳簿上で計算する利益とキャッシュフローは異なるということです。例えば、キャッシュフローの計算では減価償却費を加味しません。これは、減価償却費が実際の現金の動きを伴わない費用だからです。本計算では、実際に手元にある資金の動きのみを計算しています。
また、今回の計算例はあくまで理想的な状況を想定しています。実際の経営では、空室や予期せぬ修繕など、さまざまな要因によってキャッシュフローが変動する可能性があります。
マンション経営でキャッシュフローを増やすためのポイント
キャッシュフローの改善は、収入の増加と支出の削減のバランスがカギとなります。では、具体的にどのようなことをすればキャッシュフローを望ましい状態にできるのでしょうか。
空室対策を行う
見込んでいる家賃収入がきちんと得られるように入居者を集めることは、マンション経営における基本と言っても良いでしょう。
空室が長い間続いてしまっているときは、内装リフォームで物件の魅力を高めることも効果的です。あるいは入居者のニーズに合った設備投資も空室対策として有効となります。無料のインターネット設備や宅配ボックスの設置は、長期的に見れば入居率の向上やキャッシュフローの改善につながります。
経費を削減する
キャッシュフローを改善するためには、収入の増加と同じくらい支出の見直しも大切です。火災保険や管理委託費などは、契約更新時に複数社を比較し、無理のない範囲でコストカットを検討してみましょう。修繕費用についても、複数業者から見積もりを取ることで、適正価格で発注しやすくなります。ただし、過度な経費削減は物件の価値や入居者満足度の低下につながる可能性があるため、あくまで費用対効果のバランスを考えることが重要です。
信頼できる管理会社を利用する
信頼できる管理会社の利用は、長期的なキャッシュフローの安定につながります。入居者対応が丁寧で、建物の維持管理が適切な管理会社を選べば、空室期間の短縮やトラブル対応の迅速化が実現します。その結果、入居者満足度も上がって退室が出にくくなり、安定した家賃収入が得やすくなります。
また、管理会社が日常的に物件の設備点検や軽微な修繕をしっかり行えば、設備や外壁の劣化を早期に発見・対応でき、結果として突発的な修繕コストを抑えることにつながります。したがって、管理会社に委託すれば管理委託費はかかるものの、長い目で見れば支出を抑えることにつながります。
ローンを見直す
ローンの見直しは、キャッシュフロー改善の有効な手段の一つです。
ローンの金利相場が下がっている場合は、借り換えを検討すると返済額が減ることがあります。例えば借入残高が2,000万円、残りの返済期間が20年のローンで、金利が2%から1.5%に下がった場合、月々の返済額が約5,000円減少します。これは年間にすると6万円のキャッシュフロー改善につながります。
ただし、ローンの借り換えには手数料や登記費用などのコストが発生するため、こうした費用と金利低下によるメリットの比較検討は必要です。
マンション経営はキャッシュフローを重視して安定収益を実現しよう
今回はマンション経営とキャッシュフローについて解説しました。
キャッシュフローが安定していれば、突発的な支出や空室が発生しても経営に大きな影響は出づらくなります。一方で、利益が出ているように見えてもキャッシュフローが赤字であれば、ローンの返済や修繕費の支払いに支障をきたす可能性があります。
キャッシュフローを重視することで、収支に基づいた現実的な経営判断が可能になります。例えば、空室率を下げる施策やローン条件の見直し、不要な経費の削減など、具体的な改善策が見えてくるからです。また、キャッシュフローの余剰があれば、それを再投資に回すことが可能になります。
マンション経営を成功させるには帳簿上の利益に加えて、今使えるお金であるキャッシュフローに常に目を向けることが重要であると言えるでしょう。
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