
不動産投資ローンを使ってマンション経営を始めようと考えている方の中には、「連帯保証人が必要なのか」「誰に頼めば良いのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
ローンを組む際に連帯保証人を求められることもありますが、連帯保証人になってもらうよう頼むのは心理的なハードルが高いものです。特に家族や知人にお願いする場合、「断られたらどうしよう」「関係にヒビが入るのでは」とためらう人も少なくないでしょう。
この記事では、マンション経営を始める際に連帯保証人が必要となるケース、求められやすい条件、そして連帯保証人を立てずに済む方法についても解説します。
目次
マンション経営でローンを組む際に必要となる連帯保証人の概要

まずは連帯保証人がどのようなものなのか、どのような理由で連帯保証人が必要なのかを解説します。
連帯保証人とは
連帯保証人とは、主債務者がローンを返済できない場合に、代わって返済義務を負う人のことを指します。連帯保証人を設定する理由は、主債務者の貸し倒れリスクを減らすためです。もし主債務者が返済不能に陥った場合、連帯保証人は主債務者と同じ責任を負うことになります。
保証人と連帯保証人の違い
保証人と連帯保証人は似たような役割を果たしますが、課せられる責任の範囲が異なります。連帯保証人は主債務者と同一の義務を負うため、保証人と比べて責任が重いです。
また、保証人と連帯保証人とでは認められている権利も異なります。例えば、債権者が主債務者に請求をしてから保証人に請求するよう主張できる「催告の抗弁権」です。また、「検索の抗弁権」も保証人のみに認められています。これは、主債務者に財産がある場合、まずその財産を基にして返済をするよう債権者に求める権利です。さらに「分別の利益」と呼ばれる、複数の保証人がいる場合に、自分の負担部分だけを支払えば良い権利も保証人には認められています。
こうした権利の行使は、連帯保証人には認められていません。
2020年4月の民法改正による主な変更点
2020年4月に施行された民法改正により、連帯保証人に関する規定が変更されました。
改正により、個人が連帯保証人になる場合、「自分が保証債務を負う」という意思の表明を公正証書で行うよう定められました。もし意思表示がなかった場合、連帯保証人の関係は成立しません。これは、安易に連帯保証人になることを抑止するための決まりと言えます。
また、主債務者には連帯保証人に対して、自身の財産や収支状況を開示する義務が課されました。連帯保証人が事前に債務のリスクを把握できるようにするための制度であり、情報提供がなかった場合は、保証契約が無効とされる可能性があります。
ローンを組む際に連帯保証人が必要なケーㇲ

マンション経営でローンを組む際、連帯保証人が必要となるケースがいくつか存在します。以下にその代表的な例を紹介します。
債務者の年収が低い場合
一般的に、債務者の年収が一定水準を下回る場合、金融機関は返済能力が不十分と見なし、連帯保証人を求めることがあります。特に収入が不安定なフリーランスや非正規雇用者は、審査が厳しくなりやすい傾向にあります。
また、信用情報に延滞歴などの問題がある場合も、金融機関のリスク評価が上がり、連帯保証人が必要とされる可能性が高まります。債務者単独では不足している信用力を補完するために、連帯保証人を設定するのです。
物件が共有名義の場合
夫婦や親族などでマンションを共有名義にする場合、それぞれが取得持分に応じてローンを組むケースがあります。この場合、それぞれが互いに連帯保証人となることを金融機関から求められるのが一般的です。共有名義では全員に返済義務が分担されるため、金融機関は相互に保証を求めます。もし共有者の一方が返済不能に陥った場合でも、別の共有者が全体の返済義務を果たせるようにするために、連帯保証人を立てます。
物件の収益性に問題がある場合
ローン審査では、購入する物件の収益性も重要視されます。物件の立地や築年数、周辺物件の家賃相場など期待される収益を算出した結果、ローンの返済に十分でないと判断された場合、金融機関は連帯保証人を求めることがあります。
債務者が高齢の場合
金融機関では、完済時の年齢に上限を設けていることがほとんどです。ローンを申し込む人の年齢が高い場合、返済期間中の健康リスクが考慮され、金融機関が連帯保証人を求めることがあります。
もし完済時の年齢が上限に近い場合は、家族を連帯保証人に立てることを求められます。
ローンを組む際に連帯保証人が不要なケース
マンション経営でローンを組む際、必ずしも連帯保証人が必要というわけではありません。ここからは連帯保証人が不要となる代表的なケースを紹介します。
債務者の信用力が高い場合
マンション経営を始めるためにローンを組む際、債務者の信用力が高い場合は連帯保証人なしで借りられることが多いです。自己資金が多かったり、金融資産が豊富にあったりする場合、金融機関は債務者に十分な支払い能力があると判断し、連帯保証人を求めません。
特に、公務員や上場企業社員など、安定した勤務先で長期就業をしている人は、金融機関からの評価が高くなりやすい傾向にあります。これは、安定した収入が見込めるため、返済能力の信頼性が高いと判断されるからです。
団体信用生命保険(団信)に加入する場合
マンションの取得に伴いローンを借りるとき、「団体信用生命保険(団信)」という保険に入ると、連帯保証人が不要になる場合があります。
これは、もしローンを借りた人が亡くなったり、重い障害を負ったりしたときに、保険金でローンの残りを返済する仕組みです。団信に入っておけば、もしものときもローンの返済が保険で賄えるため、金融機関から連帯保証人を求められない場合があります。
ただし、団信には加入の条件があります。例えば、年齢が高かったり、持病があったりする人は加入できないことがあります。また、保障の内容を手厚くすると、ローンの金利が高くなることもあるので注意が必要です。
マンション経営のためにローンを組む際に連帯保証人になれる人
金融機関は、連帯保証人の「返済能力」や「信頼性」を特に重視しています。ここでは、連帯保証人として認められやすい人の特徴について解説します。
債務者の親族
連帯保証人としてよく選ばれるのが、本人の親族です。例えば、配偶者や親、子どもなどが該当します。親族であれば、お互いの経済状況が把握しやすく、信頼関係も築けているため、金融機関からの評価が得やすい傾向があります。
なお、専業主婦(主夫)のように収入のない人も連帯保証人にはなれますが、実際には金融機関からの評価が低くなる傾向があります。連帯保証人に選ぼうとしている相手に収入がない場合、他の家族の同意や追加の担保が求められるケースもあります。
友人や知人
法律上は、友人や知人であっても連帯保証人になることは可能です。しかし、実際には金融機関側は親族以外の連帯保証人を立てるのを認めない傾向にあります。これは、友人や知人との関係性が長期的に維持されるかどうかが不確実だからです。
もし友人や知人を連帯保証人にする場合、金融機関から関係性の証明や信頼性の説明を求められることがあります。したがって、一般的には親族が連帯保証人に選ばれることが多いです。
連帯保証人になってもらいたいときの頼み方
マンション経営に必要なローンを組むにあたって連帯保証人を頼むときは、相手にきちんと納得してもらうことが大切です。したがって丁寧かつ誠実な説明が求められます。ここからは、実際にお願いするときに心がけたいポイントを紹介します。
連帯保証人の責任を正しく説明する
連帯保証人を頼む際には、まず連帯保証人が負う責任について正確に説明することが重要です。連帯保証人は、ローンの契約者がローンを返済できなくなったときに、代わりに返す義務を負う立場になります。この点を伝えずに依頼すると、後々のトラブルにつながりかねません。
万が一、経営がうまくいかずローンが返せなくなった場合には、連帯保証人が自分の収入や資産から返済する必要が出てくる可能性があることを、あらかじめ伝えておきます。リスクの大きさや断られる可能性を考えると確かに言いづらい内容ではありますが、相手の信頼を損なわないためにも正直に伝えるようにしましょう。
また、先述した民法改正により、主債務者には連帯保証人に対して自身の財産や負債の状況を開示する義務が課せられました。連帯保証人になってもらう前に財産や負債のことは必ず伝えましょう。
事業とローンの返済計画を伝える
連帯保証人をお願いするときは、ただ頼むだけでなく、マンション経営の計画やローンの返し方について、できるだけわかりやすく説明することが大切です。
例えば、物件の場所や入居の見込み、家賃収入や毎月の返済額、管理にかかる費用などを、数字を交えて伝えると安心してもらいやすくなります。空室が出たときの対応や、家賃の滞納が起きたときの備えなど、「うまくいかないときにどうするか」も説明できると、より信頼につながります。
また、返済計画やローンの内容がわかる資料を事前に見せておくと、相手もより納得したうえで判断しやすくなります。こうした資料は第三者が見ても納得できるような客観的なものであることが望ましいです。
決して無理強いはしない
連帯保証人になることは、相手にとっても大きな決断です。だからこそ、無理に頼むのは避けましょう。依頼するときは、はじめに「断っても構わない」と伝え、相手に選択の自由があることを明確にします。すぐに答えを求めず、考える時間を設けることも大切です。即答を求めるのではなく、「じっくり考えてください」と伝え、相手の返事を待ちましょう。もし断られた場合も「検討してくれてありがとう」と伝え、相手の判断を尊重する姿勢を示すことが大切です。
連帯保証人の依頼は、人間関係に大きく関わる重要な出来事です。相手の気持ちを第一に考えて誠実かつ慎重に対応すれば、良好な関係を維持できるでしょう。
連帯保証人が立てられないときは
家族や知人に連帯保証人をお願いするのが難しいときでも、諦める必要はありません。連帯保証人を立てずに資金を得る方法はいくつかあります。ここでは、検討できる選択肢を紹介します。
別の金融機関を検討する
最初に相談した金融機関で連帯保証人が必要だと言われても、他の金融機関では不要になる場合もあります。金融機関によって審査基準や連帯保証人に対する方針が異なるためです。したがって、複数の金融機関に相談することをおすすめします。
中には連帯保証人を求めない金融機関もあります。例えば、不動産投資に特化した金融機関や、審査基準が比較的緩やかなノンバンクなどです。こうした金融機関は、物件の収益性や債務者の返済能力をより重視する傾向があります。
ただし連帯保証人を求めない代わりに、金利が高かったり、融資条件が厳かったりすることが多いです。単に連帯保証人が不要というだけでなく、金利や借りられる金額、返済期間などの要素から比較して選択しましょう。
保証会社を利用する
連帯保証人を頼むのが難しいときは、「保証会社」という仕組みを使う方法もあります。保証会社は、借主に代わって連帯保証人の役割を果たす会社です。一定の保証料を支払うことで、個人の連帯保証人を立てなくてもローンが組めるようになります。
保証会社を利用するメリットは、家族や友人を巻き込むことで起こり得るトラブルを避けてローンが組める点です。連帯保証人の候補がいない場合も有効な選択肢となります。
アパートローンや事業融資では、保証会社の利用が一般的な代替手段として認知されています。多くの金融機関が提携する保証会社を持っており、スムーズに手続きを進められることが多いです。
なお、保証会社を利用する場合は保証料がかかります。保証料は融資額に対して一定の割合で計算されます。また保証会社を利用する場合も、審査があります。保証会社は借主の信用力や物件の収益性を評価し、保証の可否を判断します。
融資額や条件を見直す
どうしても連帯保証人が見つからないときは、借りる金額や返済の条件を見直す方法もあります。
例えば、ローンの返済期間を短くしたり、自己資金を多めに出したりすることで、金融機関からの信頼が高まり、連帯保証人なしでもローンが通る可能性があります。
あるいは、当初の計画よりも安価な物件を選ぶ、より収益性の高い物件を選ぶといった方法もあります。
ただし、融資額や条件を見直すということは、マンション経営の事業計画全体を見直す必要があると言い換えられます。融資額や条件の変更が、投資の収益性や将来の資金計画にどのような影響を与えるかを慎重に検討しましょう。
マンション経営で連帯保証人を立てる際は慎重に検討しよう
今回は、マンション経営でローンを申し込む際の連帯保証人について解説しました。もし連帯保証人を立てる場合は、どのような責任を負うのかをしっかり説明し、納得してもらうことがとても大切です。また、連帯保証人を立てるかどうかは、マンション経営において大切な判断の一つです。焦らず、納得のいく形で進めることが何より大切と言えるでしょう。
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