個人事業主になってマンション経営をするメリットは?法人との違い

公開日:2025年05月17日
最終更新日:2025年06月02日

マンション経営で、「個人事業主として続けるべきか」「それとも途中で法人化したほうが良いのか」と悩む方もいるのではないでしょうか。手続きの手軽さや節税のメリットを考えると、個人事業主としてのマンション経営は魅力的な選択肢の一つです。

この記事では、個人事業主としてマンション経営を行うメリットや法人との違いについて詳しく解説します。個人事業主と法人の二つの形態を比較できるよう、わかりやすく整理しました。ぜひ参考にしてみてください。

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マンション経営を個人事業主として行うメリット

個人事業主としてマンション経営を行うことには、いくつかの大きなメリットがあります。主なメリットは以下の3つです。

  • 青色申告で控除を受けられる
  • 経費として計上できる項目が増える
  • 補助金や助成金の申請ができる

青色申告で控除を受けられる

個人事業主としてマンション経営を行う場合、確定申告で青色申告を利用することで税制上の優遇を受けられます。確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告を選ぶと特別控除や青色事業専従者給与を活用できます。

青色申告特別控除は、最大65万円の所得控除を受けられる制度です。青色事業専従者給与は経営に関与する家族や役員に支払う給与を必要経費として計上できる制度です。

こうした制度を利用すると、所得税や住民税などの負担を減らせます。

経費として計上できる項目が増える

個人事業主としてマンション経営を行う場合、経費として認められる範囲が広がります。不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いた額となりますが、個人事業主の場合、さまざまな項目を必要経費として計上できます。

具体的な例を挙げると、マンションの修繕費、管理費、火災保険料、固定資産税、都市計画税などが経費として認められます。さらに、マンション経営に関連する場面で使用した交通費や通信費、事務用品費なども経費として計上できます。

こうした支出を経費計上すると課税所得額を減らすことができ、結果として所得税や住民税を抑えられます。

補助金や助成金の申請ができる

個人事業主としてマンション経営を行うと、利用できる補助金や助成金の幅が広がります。補助金や助成金の多くは開業届を提出し個人事業主として登録していることが条件となるため、事業者として登録することで申請資格を得られる場合があります。

補助金の一つであるリフォーム補助金(※)は、既存住宅の質の向上や長寿命化を目的としたリフォーム工事に対して補助金が交付される制度です。マンションの大規模修繕や設備の更新などに活用できます。

また、子育て支援型共同住宅推進事業は、子育て世帯向けの住宅整備を支援する制度です。子育て世帯向けの設備を備えたマンションを建設する際に、補助金を受けられます。

これらの補助金や助成金は多くの場合、建設・改修するマンションに特定の設備を設けるなどの条件が含まれています。利用すればマンション経営にかかるコストを抑えられるほか、結果的に住む人にとっても魅力的な物件になるため、入居者が集まりやすくなる効果が期待できます。

※令和6年度に実施された内容をもとに解説しています。令和7年度に実施するかどうかはまだ発表されていません。

マンション経営における個人事業主と法人との違い

個人事業主と法人では、マンション経営においてさまざまな違いがあります。今回は主な違いを4つ紹介します。

  • 事業開始までの手続きや費用が異なる
  • 課税される税金の種類が異なる
  • 経費と所得に関する考え方が異なる
  • 社会的な信用は法人のほうが高い場合がある

事業開始までの手続きや費用が異なる

個人事業主としてマンション経営を始める場合、税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了します。法人として事業をするのと比べて手続きが簡単で、費用もほとんどかかりません。

一方、法人は会社設立にあたって登記申請が必要となり、手続きはより煩雑です。法人設立では定款の作成や登録免許税の納付、資本金の払い込みといった手順が必要になります。

課税される税金の種類が異なる

個人事業主と法人では、課税される税金の種類が異なります。個人事業主の場合は、所得税や住民税、個人事業税が課されます。所得税は累進課税制度が適用され、所得が増えるほど税率が上がります。

一方、法人の場合は、法人税や法人住民税、法人事業税などが課されます。法人税率は法人の種類や資本金の額によって変わりますが、得た所得の額によって税率が変わることはありません。

経費と所得に関する考え方が異なる

個人事業主と法人のどちらも、マンション経営に必要な費用は経費として計上できます。しかし、その考え方には違いがあります。

個人事業主の場合、基本的に収入のすべてが事業所得の扱いになります。つまり、マンション経営による収入は、他の副業や給与所得と合算されて課税されます。

一方、法人の場合は、会社と個人の所得が分離されます。個人事業主と異なり、役員報酬や従業員の給与を経費計上できるのが大きな特徴です。また、赤字が発生した場合の損失の繰越控除の期間も、個人事業主より長く設定されています。これにより、一時的に赤字が出ても、後の黒字で補填することで税負担を軽減できるメリットがあります。

経費や所得の扱いに関しては、法人のほうが柔軟に対応ができる面があります。ただし、個人事業主でも青色申告を利用すれば、一定の節税効果を得ることが可能です。

個人事業主としてマンション経営をするには?

個人事業主としてマンション経営を始めるには、いくつかの手順を踏む必要があります。

事業的規模で賃貸経営を行う

個人事業主としてマンション経営を行うためには、まず「事業的規模」で賃貸経営を行う必要があります。一般的な目安として「5棟10室基準」が用いられています。

5棟10室基準とは、賃貸住宅の経営が事業として認められる基準の通称です。戸建て賃貸住宅の場合は5棟以上、10室のアパートの場合は1棟以上あれば、事業的規模の条件を満たすことになります。この基準を満たすと、不動産貸付業として認められ、個人事業主として経営を行えます。

ただし、これはあくまで一般的な目安です。場合によっては5棟10室に満たなくても事業として認められることがあります。とはいえ、マンションを一棟経営する場合は大方この基準は超えるので、一棟経営は事業的規模で経営を行うことになるといえるでしょう。

税務署に開業届を提出する

事業的規模で賃貸経営を行っている場合、次のステップとして税務署に「開業届」を提出する必要があります。開業届は、個人事業を開始したことを税務署に報告するための書類です。開業の日から1カ月以内に提出する必要があります。開業の日の定義は厳密には決まっていませんが、一般的にはマンションの引き渡しを受けた日を開業日とすることが多いです。

なお、青色申告の適用を受けたい人は開業日から1カ月以内に提出するよう決められています。提出が遅れても罰則はありませんが、なるべく早めに提出しましょう。

開業届を提出する際には、いくつかの書類を準備する必要があります。開業届とあわせて準備が必要な書類 開業届を提出する際には、状況に応じて以下の書類も提出することがあります。

・青色申告承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇用する場合)
・個人事業税・都道府県民税に関する届出書(自治体によって異なる)

もし不明点があるときは、最寄りの税務署に相談してみましょう。

個人事業主がマンション経営をする際の注意点

個人事業主としてマンション経営を行う際には、リスクへの対策を考えておくことが重要です。マンション経営は長期的な事業であり、経営を行っている間も物件の老朽化や空室の増加、家賃下落、金利上昇などのリスクがあります。

建物や設備の老朽化については、修繕積立金を適切に確保し、計画的な修繕や定期点検に備えましょう。空室の増加を防ぐためには、適切な家賃設定や物件の魅力向上、効果的な広告宣伝を行うほか、物件の価値を維持・向上させるためのリフォームや家賃の見直しなどが代表的です。金利上昇への対応としては、固定金利のローンを組むことや、変動を想定した余裕を持った資金計画を立てることなどが対策として挙げられます。

また、個人事業主が得られる節税効果についてですが、過度な節税は脱税とみなされる可能性があります。適切な範囲で利用するようにしましょう。もし不明点があれば税理士などに相談することをおすすめします。

個人事業主がマンション経営を始めるために準備すること

個人事業主としてマンション経営を始めるためには、前段階での準備が大切になります。ここでは前もって準備したい内容を紹介します。

経営の目的を明確化する

マンション経営を始める前に、まず経営の目的を明確にすることが重要です。収益確保や税制優遇、資産形成、相続対策など、さまざまな目的が考えられますが、これらの中から自分にとって最も重要な目的を定める必要があります。

目的を明確化することで、適切な物件選びや経営手法の選択、資金計画の立案などが可能になります。例えば、短期的な収益を重視するのか、長期的な資産形成を目指すのかによって、投資する物件や経営戦略が異なってきます。

また、目的が明確でないと、途中で経営方針がブレて失敗してしまう可能性も高くなります。例えば、相続対策が主な目的であれば、収益性だけでなく相続税評価額なども考慮に入れる必要があります。

目的に応じて経営手法や計画が異なるため、開始前にしっかりと自分の目的を見極めることが成功への第一歩となります。必要に応じて、税理士や不動産投資などの専門家にも相談し、自分の状況に適した目的設定を行いましょう。

資金計画を立てる

マンション経営に関係する資金の動きを理解し、無理なく実行できる資金計画を立てましょう。資金計画は、物件取得費用だけでなく、運営費用や修繕費用、税金なども含めて立てる必要があります。

まず基本になるのは物件取得に関する資金計画です。物件価格、諸費用(登録免許税、不動産取得税、仲介手数料など)、リフォーム費用(中古物件を購入する場合)などが含まれます。

次に、運営に関する資金計画を立てます。固定資産税や都市計画税、火災保険料、管理費など、定期的な支出が含まれます。また、将来の大規模修繕に備えた積立金も考慮します。家賃収入は常に満室をキープできるとは限りません。空室の発生も想定しながら、現実的な収支計画を立てましょう。

資金計画を立てれば、マンション経営の全体像を把握しやすくなるため、より長期的な視点で経営を考えられます。

マンション経営に関する知識を学ぶ

マンション経営を成功させるためには、幅広い知識を習得することが不可欠です。マンション経営は不動産会社や物件の管理会社と協力しながら行いますが、状況に応じた適切な判断を行うには、関連する知識が必要になります。

学んでおいたほうが良い分野の一例をまとめました。

・不動産市場の動向
・不動産関連の法律
・税務、会計の知識
・建築や設備に関する基礎的な知識

こうした知識を学ぶためには、書籍やセミナー、オンライン講座の活用がおすすめです。実際にマンション経営を行っている先輩オーナーや不動産専門家との交流も、実践的な知識を得る機会として活用できるでしょう。

とはいえ、いきなりすべての分野に精通することは難しいです。自分が今どのような知識が足りていないかを客観的に見て、少しずつ知識を取り入れていきましょう。必要に応じて不動産会社や税理士、弁護士などの専門家に相談することも重要です。

個人事業主になってマンション経営で得られるメリットを活用しよう

今回はマンション経営を行う際の事業形態について解説しました。個人事業主になると、青色申告による税制優遇や経費計上が認められる範囲の拡大など、経営面でメリットがある制度を利用できるようになります。

たしかに、個人事業主として開業するにはいくつかの手続きがあり、税制優遇を受けるにはまた別の申請が必要です。それでも法人化と比べたら開始までのハードルは低いので、制度を有効活用を検討してみましょう。

加えて、マンション経営は長期的な視点が求められる事業です。目先の利益だけでなく、将来を見据えた戦略を立て、定期的に改善を重ねていくことで、安定した収益を得られる可能性が高まります。

新日本コンサルティングは、マンション経営に関する豊富な経験と専門知識を持ち、物件選びから運営管理まで、マンション経営に関する総合的なサポートを提供しています。マンション経営に興味のある方は、ぜひ気軽に資料請求やお問い合わせください。

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この記事の監修者:北嶋 憲

北嶋 憲

株式会社新日本コンサルティング アセットマネジメント事業部部⾧

1974 年1月生まれ
自身も複数棟のアパート経営を行うサラリーマン大家