アパート経営で青色申告を選択したほうが良い理由と確定申告の流れ

公開日:2024年02月09日
最終更新日:2024年04月02日
アパート経営で青色申告を選択したほうが良い理由と確定申告の流れ

「アパート経営で青色申告を行う場合、いくら控除される?」
「アパート経営を青色申告する場合、どうやればいい?」

上記のような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか?

アパート経営を行う上で、青色申告することで、節税対策が可能となります。ただし、青色申告を行う際は、一定の条件を満たす必要があるため、まずはその条件を満たすために必要なことを事前に把握する必要があるでしょう。

本記事では、アパート経営で青色申告したほうが良い理由や条件、注意点などを解説します。

「不動産経営をしたい」「アパートやマンション経営で家賃収入を得たい」などといったサラリーマンの方は、ぜひ最後までご一読ください。

アパート経営で青色申告したほうが良い理由

アパート経営で青色申告したほうが良い理由

アパート経営を行う際、青色申告したほうが良い理由は主に以下3つです。

  • 控除が受けられる
  • 赤字の繰り越しができる
  • 経費計上できる項目が増える

青色申告に関する知識を身につけておくことで、より青色申告の魅力を理解できるようになるでしょう。

それでは、順番に解説します。

控除が受けられる

青色申告を行う大きなメリットとして挙げられるのが、控除が受けられることです。青色申告を行うことで、所得金額に対して青色申告特別控除を受けられ、控除額は最大で65万円となります。

アパート経営の場合、得た収入は「不動産所得」に該当し、不動産所得は一定規模以上になることで「事業的規模」とみなされます。

青色申告特別控除を受けたいのであれば、「事業的規模」と認められなければなりません。仮に事業的規模と認められた場合、事業所得としてみなされ、65万円の控除を受けられます。

そのため、10万円の控除しか受けられない白色申告と比較すると55万円分の節税が実現可能です。

赤字の繰り越しができる

アパート経営において青色申告を選択する利点の1つは、発生した赤字を将来の利益に対して繰越せる点です。

青色申告制度では、赤字が出た年の損失を、最大で10年間繰り越して、後の年の利益から差し引くことが可能です。これにより、不動産経営の初期投資による赤字分や、予期せぬ出費が発生した際も、将来的に利益が出たときにその影響を軽減できます。

また、アパート経営で赤字が出た場合、最大で3年間繰り越しできるため、納付する所得税や住民税の削減につながるのも嬉しいポイントです。

経費計上できる項目が増える

アパート経営で青色申告を行うと、アパート経営を手伝う配偶者・家族の給与や、貸倒引当金を必要経費として計上できるようになります。

例えば、回収できない賃料を経費にできたり、テナント募集のための広告費やアパート管理のために必要な車の維持費も経費に含めたりすることが可能です。

これらの費用を必要経費として認められることで、税金を計算する際の所得が減り、結果的に支払う税金が少なくなります。

うまく経費計上を行い、節税できれば、その分自分の取り分が増えるのは大きなメリットといえるでしょう。

アパート経営で青色申告をするための条件

アパート経営で青色申告をするための条件

先ほど青色申告を行うと節税できるといったメリットをお伝えしましたが、必ずしも全員が青色申告できるとは限りません。

青色申告をするためには、さまざまな条件をクリアする必要があり、主な条件として以下の項目が挙げられます。

  • 事業規模が基準を超えている
  • 発生主義で記帳する
  • 正規の簿記で記帳する
  • 提出期限までに必要書類を提出する
  • e-Taxもしくは電子帳簿保存を行う

詳しく解説します。

事業規模が基準を超えている

青色申告を選択するためには、事業規模が一定の基準を超えていることが必要です。

具体的には、貸し付ける部屋を5棟10室以上にする必要があります。

10室以上の部屋を貸し付けている場合、青色申告に必要な事業規模を満たしたことになるため、経費計上の柔軟性や税制上のメリットを享受できます。

青色申告控除を受けたいのであれば、貸し付ける部屋を5棟10室以上の規模感にしましょう。

発生主義で記帳する

青色申告控除を受けたいのであれば、現金主義で記帳をつけるのではなく、取引が発生したタイミングで記帳する必要があります。

現金主義の場合、現預金の入出金があった時点で費用と収益を計上する方法です。

一方、発生主義会計では、取引が行われた時点で収益や費用を計上します。例えば、アパート経営において、12月に家賃の請求を行い、実際の入金が翌年1月に行われた場合、発生主義では12月の時点で収益として計上します。

同様に、修繕を依頼して費用が発生した場合も、実際の支払いが後になったとしても、取引が発生した時点で計上します。

このように、発生主義で記帳することで、事業の実態をより正確に反映した会計が可能です。

正規の簿記で記帳する

青色申告を行う上での基本条件の一つは、正規の簿記方法に従って記帳を行うことです。

正規の簿記とは複式簿記のことをさし、主に損益通算書と貸借対照表を作成します。

正規の簿記は、財務の透明性を保ち、正確な税務申告を実現するために不可欠です。収入と支出が明確になり、アパート経営の財務状況を正確に把握できれば、税務上の適正な申告を行うことが可能になるでしょう。

提出期限までに必要書類を提出する

青色申告を選択するには、指定された提出期限内に必要な書類を提出することが重要です。

ここでいう必要書類とは、主に以下のものが該当します。

  • 確定申告書
  • 損益通算書
  • 貸借対照表

青色申告制度を利用するためには、上記のような特定の書類を税務署に提出する必要があります。期限内にこれらを提出することで、青色申告の利点を享受するための資格が与えられます。

なお、提出期限は例年3月15日となるため、注意が必要です。

e-Taxもしくは電子帳簿保存を行う

青色申告を行う際の1つの条件は、e-Taxを利用するか、もしくは電子帳簿保存の手法を採用することです。

e-Taxを活用することで、税務申告をオンラインで行うことが可能になります。自宅にあるパソコンから確定申告書と青色申告決算書のデータを送信するだけで、65万円の控除を受けられます。

また、電子帳簿保存を行い、経費や収入などの帳簿をデジタルで保存することも、青色申告控除が適用される条件です。

インターネットで税金の管理や電子申告ができるため、紙で管理するといった手間がないのも大きなメリットでしょう。

アパート経営で青色申告を行う際の注意点

アパート経営で青色申告を行う場合、経費にできるものとできないものがあるため、注意が必要です。

こちらの見出しでは青色申告で経費にできるものとできないものについて、以下の表にまとめてみました。

経費にできるもの

項目説明
管理費アパートの管理を委託している場合に支払う手数料
修繕費経営するアパートの修繕にかかる費用
減価償却費固定資産の購入額と耐用年数を照らし合わせて分割し、その期ごとに費用として計上する費用
損害保険料 火災保険や地震保険などの保険料
租税公課 国や公共団体等が徴収する税金や負担金
借入金の利息 住宅ローンの借入金にかかる利子
広告宣伝費・仲介手数料入居者募集のために広告をうつ費用・不動産会社に支払った
その他アパート経営において必要な飲食代や交通費など
※アパート経営に関係のない飲食代や交通費は経費にすることは出来ない点に注意

経費にできないもの

^項目説明
借入金元本の返済分
所得税・住民税所得にかかる税金

青色申告を行う際にこれらの点に留意することで、アパート経営における税務処理を効率的かつ正確に行い、経営の安定化に寄与することが可能となるでしょう。

【アパート経営者向け】青色申告の流れ

最後に、アパート経営で青色申告を行う流れをご紹介します。

主な流れは以下の通りです。

  1. 青色申告承認申請書の届出を行う
  2. アパート経営で得た収入とかかった経費の計算を行う
  3. 確定申告書類を作成する
  4. 確定申告書を税務署へ提出する

詳しく解説します。

Step1.青色申告承認申請書の届出を行う

アパート経営で青色申告を行うプロセスの初めのステップは、青色申告承認申請書の届け出です。

青色申告を希望するアパート経営者は、まず税務署に対して青色申告承認申請書を提出する必要があります。

この申請書の提出によって、税務当局はその事業が青色申告の要件を満たしているかを確認し、承認を下します。

アパートの貸し付けを始めてから2カ月以内に提出する必要があり、個人事業主としての開業届も準備が必要となるため、注意が必要です。

Step2.アパート経営で得た収入とかかった経費の計算を行う

青色申告では、アパート経営による全ての収入と経費を正確に計算しなければなりません。

収入には家賃収入が含まれ、経費には修繕費、管理費、減価償却費などが含まれます。

これらを正確に計算し記録することで、申告すべき税金の額を決定します。

Step3.確定申告書類を作成する

アパート経営で得た収入とかかった経費の計算が完了したら、確定申告書類を作成しましょう。

確定申告とは、その年の1月1日〜12月31日までに得た所得の税金を翌年の2月16日〜3月15日までの間に納税する制度です。

確定申告書類には、アパート経営から得た収入の全額と、経費として認められる支出の詳細が含まれます。

この書類は、年間の税務計算を基に作成され、収入、経費、計算された税額が明確に記載される必要があります。正確な申告書類の提出は、税務上の義務であり、適切な税金計算の基盤となるのです。

なお、作り方がわからなかったり、時間がなかったりする方は、税理士へ作成依頼するのもおすすめできます。

Step4.確定申告書を税務署へ提出する

確定申告書類の作成が完了したら、納税の手続きを行うため、確定申告書を税務署へ提出します。

この提出は、年間の収入、支出、計算された税額などを含む、アパート経営の財務状況を公式に税務当局に通知する手段です。

確定申告書の提出により、税務当局は経営者の税金額を正確に把握し、適切な税金が徴収されるようになります。

アパート経営の青色申告に関するご相談は新日本コンサルティングまで!

本記事では、アパート経営で青色申告したほうが良い理由や条件、注意点などを解説しました。

青色申告を行うことで、最大65万円の控除が受けられるため、節税手段としておすすめです。

ただし、青色申告をするためには事業規模が基準を超えていたり、発生主義で記帳したりなどの条件をクリアする必要があります。

まずは、適切な節税対策ができるよう、正しく経費計上して税金を減額できるようにしましょう。

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この記事の監修者:宮永 泰宏

宮永 泰宏

宮永会計事務所 代表税理士 / 日本M&Aセンター 所長

【保有資格/認定】
・税理士登録(65907)
・MAS監査プランナー事務所認定